お父さんと子どもが楽しそうに過ごしている家族連れの姿をたくさん見なければならないことにつらい思いもしましたが、主人の死後、悲しいことしかなかった私には、子どもたちの本当に喜ぶ顔を見たことだけでも幸せな気持ちになり、ハトコ夫婦には感謝です。
ハトコの彼は、物心ついた時にはお父さんが亡くなっていました。子ども時代はいじめられ、裸にされたこともあったそうです。やがて、家庭の事情で、いじめに遭っていた学校から転校することになりました。もしあのままその学校に行っていたら自殺していたかもしれなかったと彼は話していました。お父さんがいない心細さを誰よりも知っている私の身内です。大人になってから、こんな話をしたこともなかったのですが、お父さんを亡くした私の子どもを元気づけようと、朝5時起きして、ディズニーランドに来てくれたのです。自分たちは、ひたすら駆け回って子どもたちのために予約券をとってくれました。自分のできることならなんでもするから、と一生懸命、他人の悲しみを和らげようとしてくれるこんな優しい人たちがいます。
一方、主人を殺した犯人者たちのように自分さえよければ、ほかの人は殺してしまってもいいと思っている悪魔が同じ人間として存在するのです。犯人たちも、その家族も、今も私たちがどんなつらい思いで、多くの温かい善意の人々に助けられながら、必死に生きているかなど全く想像できないのでしょう。人を殺めておきながら、自分の罪を軽くすること、自分たちの家族を守ることしか考えない人間たちです。そして、実際に加害者にもその家族も、しっかり「人権」に守られている。
今、日本では毎日のように、罪のない人間が被害者になる事件が起きています。このままでは残酷な殺人事件は減る事はないでしょう。