埼玉県ふじみ野市の市営プールで、小学生の女の子が流水プールの吸水口に吸い込まれて死亡するという痛ましい事故が起きました。亡くなられた戸丸さんのご冥福を心からお祈りいたします。この「事故」は日がたつごとに、プール管理のずさんな実態があきらかになり、「事件」に至る様相を増してきました。
子どもたちや親たちにとっては、公営プールで遊ぶことは夏休みの日常的な光景です。「準備体操をよくする」「飛び込まない」「プールサイドを走らない」大人たちにこんなことを注意されて、それを守る事で、子どもたちは大好きなプールで安全に遊べるものだと思っています。しかし、大好きなプールで、女の子は大人たちによる安全軽視のせいで命を落とすことになってしまったのです。
プールの管理は、ふじみの市から委託されていた業者(太陽管財)が別の会社に業務を丸投げしていました。6〜7年も前から本来ボルトで固定するはずのフタが針金で留めてあったこと、さらにその針金が腐食していたこと、プールの「監視員」のほとんどがアルバイトであり、中には泳げない人や高校生のアルバイトもいたことなど、あまりにもずさんさな管理状態を、ふじみ野市も、市から直接委託された「太陽管財」も知らないまま、プールは毎日運営され続けていました。
太陽管財の受注額は2001年以降年々減少し、5年間で約4割減額したことがわかりました。(東京新聞8月2日)
2001年 1800万円、
2002年 1750万円、
2003、2004年1350万円、
2005、2006年1100万円、
民間に安く管理を任せ業務を丸投げした「自治体」、自分の会社の名前で入札だけして業務を別の会社に丸投げした「太陽管財」、安い金額でやりくりするために、安上がりなアルバイトで人件費を抑え、高校生のアルバイトに多くの人の命を託した下請け会社の「京明プランニング」、この3者から「責任感」という文字は1つも見えてきません。
自治体が民間に仕事を委託することは、最近どんどん増えています。民間会社が持つノウハウがきちんと反映され、自治体の仕事より効率よく、うまく運営されるならば、それに越したことはありません。しかし、自治体が民間に委託する事業には「自治体運営では金銭的に無理がある事業」が多いことは確かです。これは、一般の民間企業が喜んで「やりましょう」と手を挙げる(入札する)金額の事業ではないということです。
予算的に厳しい事業を自治体が民間に任せる。安くても事業を引き受ける民間会社が、さらに安く仕事をしてくれる下請けに事業を下ろす。その仕事が、土木事業などではなく、人の命を預かる仕事であったことを、誰もが忘れていたところに、今回の事故が起こったのではないでしょうか。
中野区でも保育園、体育館(プールも中にあります)運動場などの施設を指定管理者制度と言うやり方で、民間に委託を始めています。この方法を取ることによって区が事業を担うより安く担え、民間の様々なノウハウを取りいれられるというメリットがあります。しかし、間違えば、人件費を削った事によるサービスの低下、安全性の低下なども考えられるのです。
このふじみ野市の事故を教訓に、行政に携わる人間はもう一度自分の自治体がどんな分野を民間委託することが望ましいのか、民間委託した会社に対してきちんと指導はできているのか、きちんと検討し、自治体の自己責任を全うして、安全とサービスを提供してもらいたいものです。
中野区の対応
この事件を受けて、中野区の教育委員会は区内全小中学校43校の吸排水口の安全対策を調査しました。給排水口のふたは全てボルトやビスで固定されていましたが、パイプの吸い込み防止金具について、設置が確認されたのは10校のみで、33校のプールを使用中止にして金具の設置をするそうです。
危険性は高くないといえ、一般開放している学校もあり、プールシーズンに使用中止とするのでは、楽しみにしている区民に申し訳ない思いです。日頃からのきちんとした管理が求められます。