「自己中心的で情状の余地はない」とそれぞれに以下の論告求刑が下されました。
酒井裕 懲役18年
坂本亮 懲役16年
高橋祐介 懲役12年
被害者遺族としては、残虐この上ない彼らが二度と世の中に出て来られないことを望み、このような短い刑期で済むのは納得がいかないものです。それでも、法の決まり事の中で出された論告求刑の中では、「重い刑」だということです。
10月からこの事件を引き継いでくださった検事さんは、厳しい口調で話されました。
酒井に対しては「被害者(近藤浩)には、何の落ち度もない。被害者は、酒井の背任行為のむしろ『被害者』であった。被告の行為は、自分にとって邪魔なものは、どんなことがあっても排除するというものである。反省の態度は乏しく、犯行を正当化しようとしている」
坂本に対しては「人間の生命を考えていないか、人間としての資質が欠けている。最も非難されるべきは、布団袋で巻かれた被害者をさらに布団で巻くよう指示し、被害者が5時間に渡る苦しみと絶望の末に死んで行くのを放置した無慈悲な態度である。また、犯行後、被害者を殺した家で、心の痛みを感じず平然と生活を送っていた」
高橋に対しては「酒井から坂本に渡される金は殺人の代価であることを充分認識していた。上司(坂本)の命令なら殺人も犯すというのは、殺人集団や暴力団であり、一般的には考えられない。(被害者の尾行は)計画の犯行に必要不可欠であった。その後、被害者が5時間に渡り苦しみ絶望の中に死んで行く様子を見守っていた。被害者を助ける機会はいくつもあったが、都度責任逃れをしている」
論告求刑が言い渡された後で、それぞれの弁護士の弁論がありました。
驚いたのは、酒井の弁護士の話です。(酒井には弁護士が3人ついています)それは、「ケト・ハーベスタを巡る、被告(酒井)は日本の林業のためを思ってケトの商権を得た(商権持ち逃げの正当化)という酒井の主張を長々と繰り返し、商権裁判の中で、なぜ、自分だけが苦しめられなくてはならないのかと裁判の担当者である被害者を恨んだ(近藤浩を排除することの正当化)」と言う、まるで「殺人は仕方なかった」「殺人を考えたのは止む終えない事情による」とでも言っているように聞こえるものでした。この残虐この上ない殺人に対し、何の反省も持たない酒井の身勝手な解釈を堂々と自信たっぷりに述べるという考えられない弁護士発言です。
この弁論を一緒に聞いていたある傍聴者は後で言っていました。「何、あの弁護士、まるで殺人を正当化してる。殺人は仕方がない行為で、会社の商権を盗むのも仕方がなかった、裁判で追及されて追い込まれたから殺したのも止む終えなかったという内容だった。本当に信じられない、恐しい弁護士だ」
論告求刑を言い渡された場で、「被害者には殺されるだけの理由があった」とでもいうように死者を侮辱し、商権の持ち逃げ、会社に与えた莫大な損害、そして殺人までを正当化し、言い訳を続けたのです。この弁論に驚き、怒り心頭の気持ちを抱いたのは、私たち被害者遺族とその仲間だけでしょうか。
また、「なぜ一度も傍聴にも来ないのか」という疑問を抱いていた酒井被告の奥さんについては、「被害者遺族と顔を合わせるのが辛いから」との言い分でした。当たり前です。被害者遺族がどんなに辛く、それでも月に2度もある裁判に毎回、毎回、何を置いても傍聴に行き、苦しい気持ちを意見陳述し、どんなに大変であるか、理解しようともしない身勝手な言い分です。近藤浩亡き後、双日㈱の商権裁判で認諾された賠償金を払わずに、酒井被告の父親の家(坂本が住んでいた、近藤浩がそこで亡くなった荻窪の家)をさっさと売り払った酒井被告の家族は、謝罪の気持ちなど一切持ち合わせないものと思えます。
坂本被告と高橋被告の弁護士さんは、罪を認める弁論をされました。そして遺族にきちんと謝っていくことを本人にも教えてくださっていました。
今日も双日マシナリー㈱からたくさんの方が傍聴に来てくださいました。また主人と一緒に仕事をしていた方もはるばる遠方からいらしてくださいました。皆様お忙しいところ本当にありがとうございました。
次回、沢田将基(まさき)、緒方剛(たける)、齋藤揚礼(あつのり)に対する論告求刑が10月21日(金)午前10時から、地裁531号法廷であります。