この学校の社会科の平野先生は「よのなか科」の授業をおこなっています。平野先生が初めて授業をした数ヶ月前は、かなり荒れていて、授業が成り立たないようなこともあったそうです。それでも「よのなか科」の授業に、様々なゲストが来て話をしたり、授業をいろいろな大人たちが見守って行く中で、生徒たちは落ち着いて話を聞くようになったそうです。
中学3年生はこの時期、「公民」の授業で裁判の勉強をしています。弁護士の話も前回の授業で行われました。「被害者の立場も、子どもたちに知って欲しい」との先生の要望で、今回私が授業をさせていただきました。平野先生は、私の報告書「小枝通信No.5」の裏面の「双日(株)殺人事件」を教材にして授業を進めてくださり、生徒たちは驚くほど真剣に私の話を聞いてくれました。授業が終わって、泣いている生徒もいました。
取材に来ていた方が「このクラスの生徒は決して犯罪の加害者にはならないですね」と言われました。これは私にとって最も嬉しい言葉でした。私は主人を犯罪事件で亡くしてから、「子どもたちを加害者にさせない」ことを大きな目的として、いろいろな育成活動に取り組んできました。子どもたちが、他人の痛みが解る人間に育ってくれることを願って止みません。私は命の大切さをこれからも子どもたちに伝えていきたいと思っています。
帰る時に校長先生に「いい生徒さんたちですね。」と挨拶をしました。きっと、これまで生徒がうるさくて授業がうまく進まないこともあったのでしょう。校長先生は照れくさそうでした。平野先生の「よのなか科」、いろいろ苦労されているようですが、がんばる先生の姿に、生徒たちは少しずつ応えているように思えました。