以前、主人と一緒に仕事をしていた女性が、熊本からお線香を上げにいらしてくださいました。主人が殺害されたこの事件のそもそもの始まりは、熊本でした。その事務所を閉めるまでニチメン原動機販売で働いていた女性です。当時、酒井は東京でしたが、酒井、主人、彼女とほとんどこの3人で仕事をしていたのです。わざわざいらしてくださって、ありがたくてたまりませんでした。
彼女は、仏壇の前で泣きながら、主人の正義感あふれる人間性を褒め、一生懸命な働きぶりを話してくださいました。「近藤さんは残業代をつけていなかったから、この会社は残業代がつかないのかと思っていた。その後近藤さんの後に来た人は、残業代を細かくつけていたから、どうして近藤さんは付けなかったのか不思議だった。土日も、毎週のように働いていたのに・・」とおっしゃっていました。当時、土日も主人は仕事に出かけ、私は小さい子どもを抱えてどこへも行けず、つまらない思い、つらい思いをしていたので、その労働状態をよく覚えています。私は、その時主人が残業代をもらっていないことなど、気がつきませんでした。しかし、今思えば、主人は会社のために、会社の売り上げを伸ばすために残業代も申請せずにひたすら働いていたのです。
儲かっていた会社の商権を持ち逃げして自分だけの利益にした酒井。休みなく働き、会社に莫大な利益をもたらし、それを上司に盗まれてしまい、会社のために商権を取り返し、そのために殺されてしまった主人。商権を取り返すことを命令しておいて、働いた社員が殺されてしまっても「残念でした。」と言い、労災が下りても、病死と同じ扱いしかしない会社と言う組織。この3者の中で、真面目で、誠実で、立場が弱かった主人だけが馬鹿を見る結果となり、これではあまりに主人に失礼なのではないかと改めて思いました。
彼女と主人が熊本でどんなにがんばって働いていたかを聞かせていただき、悲しさの中にも嬉しい来客でした。