豊ヶ岡学園
愛知県豊明市にある少年院「豊ヶ岡学園」へ行きました。
少年院とは、家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し、社会不適応の原因を除去し、健全な育成を図ることを目的として矯正教育を行う法務省所管の施設です。
豊ヶ岡学園では、更生教育の1つに被害者の視点に立ち、自己の行為を見つめさせる「被害者講座」を取り入れています。
私は講師として招待を受け、2時間ほどお話をさせていただきました。少年たちは、私の話を身動きもせず、目を逸らさずに、背筋を伸ばした姿勢で2時間、聞いていました。40人ほどの少年たち、ほとんどの子が優しい表情で、ある子は目を潤ませながら、一生懸命聞いていました。被害者が置かれた立場がどんなにつらいものであるか、それはあなたたちが起こした行動と同じであり、とても傷つけられた人がいること、どんなことがあっても人を殺めてはいけないことなどを話しました。
講演の前後、豊ヶ丘学園の園長である横江俊郎園長といろいろなお話をさせていただきました。園長は、「少年たちに被害者の声を聞かせ、罪をきちんと受け入れることをしなければ、更生したことにならない」また、「子どもたちを指導する職員たちにも被害者の話しを聞かせることは、大変重要なことである」とおっしゃっていました。1人1人の子どもたちと日々向き合い、職員たちの意識を高め、人間がどうしたら更生するのかと言うことにきちんと向き合い仕事をされている園長の方針に感銘を受けました。
園長と私の共通の思いは、少年たちが少年院に入る前、また出た後に、子どもたちの声をきちんと聞いてくれる、家庭、学校、その他の環境がなくては、少年たちだけに真面目な生き方を求めることは異常に厳しいということです。借金取りに毎日追われる家族、毎日のように暴力を振るう親、そんな環境で育った子どもたちは、ある意味で社会の被害者でもあります。加害者になって初めて自分と向き合ってくれる大人、少年院の職員と出会うのではなく、罪を犯す前に、罪を犯すことは許されないことであることを親身になって教えてくれる大人の存在が必要なのです。私は、被害者になる前から、今の子どもたちの社会に何よりも必要なのは、「子どもたちを正しい道に導いてくれる大人の存在」だと思っていました。今回、豊ヶ岡学園を訪れ、益々その思いは強くなりました。