杉並区にある「ゆう杉並」を視察しました。「ゆう杉並」とは、区立の児童青少年センターと男女平等推進センターとの複合的施設です。
正面玄関
私は以前から「中学生の放課後の居場所」を考え、クラブ活動の充実を議会で取り上げてきました。しかし、一部の運動部や、わずかな活発なクラブ活動に属している生徒たち以外は、どこにも居場所がない生徒が少なくない現実を見てきました。小学校までは児童館があり、何をするわけでもなく、立ち寄れる場所があり、声をかけてくれる友達、職員に出会えました。中学生になると、少ないクラブ活動の中から選択して活動する以外、学校から離されてしまうので、行き場を失う生徒たちが出てきます。若い育ち盛りの生徒たちが、お金を使わずに、自由に放課後を過ごせる施設、それが「ゆう杉並」です。
「ゆう杉並」の中には、体育館、ドラムやアンプなども用意されたスタジオが3つ、ミキシングルーム、演劇などができるホール、工芸・調理室、集会室が2つ、時間制でゲームができる部屋、学習ができる部屋、自由に遊べるロビー等があり、その中で中高校生が楽しそうに過ごしていました。1日平均200人ぐらいの利用があるそうです。もう10年も前に作られたものですが、中高生の居場所のために、多くの税金を投資し大型施設を作った杉並区の姿勢に、子育てに力を入れていることを強く感じました。
ホール
ミキシングルーム
学習室
18歳までが使える施設です。施設を作るところから、運営、行事、すべてを、子どもたちが話し合いで決めて来ました。
そして私が最も感心したのは、いろいろなスポーツをしている体育館に4人のスタッフ、演劇の練習に1人のスタッフ、ドラムや機材を指導するところにもスタッフ、とあらゆる場所に大人がいることです。多くの大人に見守られながら、子どもたちはのびのび自分たちの好きなことに取り組んでいました。子どもたちの自主力で何かをやらせるためには、その下支えに多くの大人の力が必要なこときちんと理解して運営されていることが伝わってきます。私がいつも訴えている「子どもたちを正しい道に導いてくれる大人を」「一緒に考えてくれる大人を」、この施設には子どもたちの周りに、その大人たちがいるのです。
中野区では、現在運営中の児童館を減らし、中高生館を作ろうとしています。もちろん「ゆう杉並」のような大きな施設ではないのですが、職員を減らして、児童館数を減らして、とにかく中高生館を作るという考えです。他区でも中高生館を作ったが子どもたちが来ないと言うところもあるそうです。いくらお金をかけて建物を作っても、そこに、子どもたち自身が居心地の良い場所になるように話し合い、導いてくれる大人の存在があるのではなければ、ただの要らない建物になってしまうのです。子どもたちを長年育ててきた指導のプロによって忍耐強く努力がなされて、初めて成功へと繋がっていくのです。
常勤・非常勤いろいろな職種職員28名が実際に子どもたちに関わる「ゆう杉並」。贅沢なほど充実した子どもたちの居場所でした。杉並区長、杉並議会の子どもたちの周りの職員を削減しない姿勢は羨ましい限りです。2月にはこの施設を安倍総理大臣も視察されたそうです。政府は少子化対策に力を入れているのですから「ゆう杉並」を見て、子どもたちを取り巻く人材の必要性を感じていただけたかと思います。
また、壁には杉並区が力を入れて取り組んでいる犯罪被害者支援のポスターも貼られていました。日常の生活の中で、子どもたちの頭には「犯罪被害者」と言う言葉が入っていきます。子どもたちは、区が被害者に対して一生懸命取り組んでいることを知れば、自分は加害者にはなりたくないと思うのではないでしょうか。
犯罪被害者支援のポスター
これから中野区の児童館が変わっていきます。この「ゆう杉並」は大変参考になる施設でした。改めて職員の大切さを教えてくれました。しかし、中野区では、子どもたちの周りの職員を削減し、一方で他の区もしていないような副区長のポストを増やす予定です。私は反対しますが、議会の多数決がすべて区民の民意なってしまいます。これも中野区民が選んだ方向と考えるしかないのでしょうか。